第27章 【それぞれのクリスマス】
あんな挨拶、気にする方がおかしいのだろうか。シリウスの態度を見るに、気にするだけ無駄な気がしてきた。
「皆、メリー・クリスマス」
「メリー・クリスマス、ハーマイオニー」
ハーマイオニーは何故か機嫌が良さそうだった。彼女のわきにはラッピングされた包みが置いてあり、顔には「これが何だか聞いてちょうだい」と書いてあった。
こういう時は大抵ろくでもない場合が多い。ハリー、ロン、クリスの3人は顔を見合わせ、誰が話しを切り出すか視線だけで語り合った。
その結果、3人を代表してハリーが訊ねた。
「えー……ハーマイオニー、それなに?」
「よく聞いてくれたわ!!これはクリーチャーへのクリスマスプレゼントなの!」
「ちょっと待ったハーマイオニー。奴にプレゼントだって?言っておくがアイツは騎士団の情報を聞き過ぎてるから――」
「洋服じゃありません!これはパッチワークのキルトなの。これがあれば少しはクリーチャーの部屋が明るくなると思って!!」
やはり『反吐』活動の一環か、と3人はうんざりした。
しかし止めろと言ったところでハーマイオニーは聞かないだろうから、クリス達はもう何も言わずにハーマイオニーのやりたい様にさせるとにした。
朝食が終わると、ハーマイオニーは早速シリウスにクリーチャーの部屋を尋ねていた。
「ああ、あそこのボイラー室を巣にしているよ」
「ボイラー室ね。ありがとう」
「しかし、どうして屋敷しもべって言う生き物は暗くて狭いところが好きなんだろう」
「クリスの家の屋敷しもべはどこで寝起きしてたの?」
「階段下の物置だ」
クリスがそう言うと、何故かハリーが飲んでいた紅茶を勢いよく吹き出して咽ていた。
ハーマイオニーが厨房のボイラー室の扉を開けると、中は汚い上に異臭を放っていた。
床にはカビの生えたパンの食べカスや腐った野菜のクズが転がり、部屋の奥にはボロ布や古い毛布が、巣のように寄せ集められている。
流石のハーマイオニーもこの有り様には一瞬顔をしかめたが、すぐに気持ちを持ち直して、汚れた毛布の上にプレゼントを置いた。
「これで部屋に戻ってきたら、プレゼントに気づくわ」
「そう言えば、アイツどこに行ったんだ?」
「確かに最近見かけないな」