第25章 形成逆転
「やったー!いい気分♪単純な腕力なら宗次郎…いや私の方が上でしょ?」
「…どういうつもりですか、これは。」
「私の顔で怖い顔しないでよー…」
「ふざけないでください。」
ばたばたと足を動かすものの、虚しく空を蹴るだけ。
「……屈辱だな。」
「…自慢じゃないけど、私の体じゃ勝てないでしょ?」
「叶さんに見下されるなんて最悪です。」
「何とでもどーぞ♪」
ふふん、と笑ったと思いきや、突然覆い被された。
「えっ…?叶さん、何を…?」
「私のここ…弱いって言ってたよね…?」
「え?」
途端にぞわり、と耳元から総毛立つ感覚。吐息が其処に触れ、意図せずため息が漏れる。
「!…っ…」
思わず身を捩らせてしまう。僕の焦りを知ってか、彼女はなおも同じ所作を繰り返す。
「宗次郎、かわいい。」
「…っ、何がしたいんですか…!どいてください。」
「何がって…?」
叶さんは楽しそうに微笑んだ。
「あの時の仕返し☆」
(※『想い、ひとひら』参照)
…とびきりと言ってもいい、真っ黒な笑顔。
「…!え、嘘ですよね…?」
「ほんとだよー?」
意地悪そうに笑う彼女は悪魔だった。
…結局、解放されるまで散々弄ばれてしまった…
形勢逆転
(ね、宗次郎かわいかったんだけど。)
(…うるさい。)
(…元の体でもちょっとやりたいかも。)
(それを僕が許すとでも?)