第5章 Aiba.
洋服や荷物を詰め終わって、
ふう、と1つため息。
横に視線をやると
「お疲れ様。はい、コーヒーね!」
優しい笑顔の相葉くんが
コーヒーを差し出してくれた。
ちゃんと甘くしてくれてるし…!
「…本当はずっと一緒に居たいんだよ」
「うん」
「でも、お仕事だから。
だから…行かなきゃ…っ…」
海外は日本からいつも遠い。
遠いから不安になる。
かっこいい相葉くんだから、
綺麗な女優さんにいつ口説かれるか
浮気しないなんて、分かってるのに。
「ふふ、うん。だいじょおぶだよ
電話もメールもするし
なんなら帰国のとき迎えにだって来るよ
イタリアなんて、愛里ちゃんが
誰かにとられたらやだなあ
俺、イタリア語話せねぇもんなあ…」
「…ありがとう相葉くん。」
「いいよ。笑って頑張ってきてね
ここで手を広げて待ってるからね」
バッと手を広げる相葉くんに、
流れた涙も拭わずに
私は走って腕の中へ飛び込んだ。
優しく包み込んでくれる腕の中で、
二ヶ月分の温もりを染み込ませる。
「…やっぱ好き。」
ああ、
やっぱり私は相葉くんが好き。
(イタリアか、)
(なんなんだろうね。)
(俺も行こっかなあ)
(えっ!?)
(そしたら一緒に観光しよっかあ!)
(…お仕事どおするの?)
(……あ)
(おバカさん。)
(みんなのおバカさんだもんね)
(違うよ、私の)
(…ふふふ。可愛いなあもう。)