第3章 Sakurai.
いつだって俺は卑怯だった
彼女が好きなんだと言う奴が居たら、
くっつかないようにして。
フラれたらどんまい、と励まして。
彼氏が出来たら悔しいくせに
おめでとうと言って。
別れたら良い人が居るよと慰める。
自分じゃなにも出来なくて、
ズルズルといい位置を固定して
俺は、好きも言えずにいた。
「翔は好きな子とか居ないの?」
居るよ、と言えたなら
どんなに良かったことだろう。
君だよ、と言えたなら
どんなに楽なことだろう。
勇気のない俺は、
「君だったりしてね」
なんて冗談っぽく言ってみるんだ。
どんな反応するか、確かめたくて
卑怯だって分かっているのに。
「ふふ、ホント~??」
そして君は微笑みながら
俺の冗談っぽい本音に乗ってくれる。
優しさなんか、
苦しいだけじゃないか