第14章 戦の跡
まずは手当てのための消毒に焼酎を分けてもらおう
台所へ向かうと、明日の宴の準備のため女中さん達が忙しそうにしていた
声をかけようとすると、女中さん達の会話が耳に入る
「信玄様、無事帰ってらして良かったわー」
「本当。信玄様がいないと活気が湧かないのよね」
『信玄様』と言う言葉に思わず聞き入ってしまう
信玄様はやっぱりモテモテだな
クスリと笑う
「でも、なんだか最近の信玄様変じゃない?」
「あたしも思ってた!」
「そうそう。優しいは優しいんだけど…なんか距離感じるのよね」
「色町の子たちも言ってた!!」
それって…もしかして……
昨日の信玄様との会話を思い出す
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『…なぜかな?君の美しさに、心が惑わされたか?』
『…誰にでもそんなことばかり言ってると、いつか女子に刺されますよ!』
『最近は、言ってない』
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信玄様が言ってたこと…本当だったのかな?
信長様との戦もあったし、それどころじゃなかったのかも…しれない…けど…
私の心臓が小さくドキリと鳴る
「あら、乃々様。おかえりなさい!」
「あ……ただ今戻りました。」
私に気づいた女中さんたちが、無事に帰った私を歓迎してくれた
私はみんなと話してる間に、その小さな高鳴りを心からかき消した