第3章 武器持たぬ狙撃者
「この世界の言い伝えらしいよ。あと6人仲間ができるみたい」
「へぇ、どんな仲間かな?」
「えっと。森を統べる王族、心優しき残虐なる者、閉目の可視者、悲しき鬼女、森を守りし者、神が遣わし導き子。意味、分かるか?」
「んー。何だろうね、わかんないや」
そう言った十四松だったが、思い付いたのか顔を上げた。
「森を統べる王族って、森エルフのことかもね」
「そうなのか?」
「僕の師匠、森エルフ王の息子だって言ってたから」
「なるほど!って、王子が?跡継ぎ、どうすんだ?」
「何かね、弟さんがいるんだって」
「よほどのことがあったんだろうな」
お腹も満たされ、意気揚々と歩き出す二人。十四松は本当に元気だ。
「ハッスルハッスルー!マッスルマッスルー!」
その上着はダボダボというよりは、ただサイズが大きいだけという感じがした。何より袖が手より長く、だらーんと垂れている。
「僕もゴールドドラゴンに、お願いしよう。魔法を使わなくてもいい世界にしてもらうんだ!」
「そうだな。平和な世界にな」
「うん!」
十四松はかすかに光る涙を袖で拭い、おそ松に笑いかけた。
「おそ松、ありがとう!君に会えて、よかった!」
おそ松は照れ臭くなって、鼻の下を指でこすった。
「よせやい。照れるぜ」
「何かね、兄さんができたみたい!」
「兄さんかぁ。んー。んや、やっぱ普通におそ松でいいや」
「あははー。照れた?」
「ばっ!やめろって!」
「顔、真っ赤!」
「おまっ!弟なら弟らしく、兄ちゃんの言うことを聞け!!」
ゲンコツで頭を小突いた。
「ごめん、ごめん!!」
そんなことをしながらも二人は、どこか嬉しそうだった。
それから数日が経ち、いつしか十四松はおそ松を兄と呼ぶようになり、おそ松もそれを受け入れていた。二人は深い森の中にいた。
「おそ松兄さん、僕からはぐれないでね。わき見したら、ダメだよ?」
「お、おう」
元気そのものの十四松とは裏腹に、おそ松はボロボロだった。森の中は不慣れなのだ。
「いてて!引っ掛かった!」
見かねた十四松は、おそ松を背負う。
「よいしょー!」
「おわ!ちょ、いいって!」
「あは。いいから、いいから。しっかり掴まっててね?走るよ?!」
「え?いや、あの…。十四松さん?」
「どぅーーーん!!」
「わああ!」