第12章 おそ松の修行
「風の音じゃない?今日は風、強いから」
確かに風は強かった。風になびく木や葉の音が聞こえる。
「そうだな、気のせいかもな。あるいは風が、泣いているのか」
「はいはい、そーだねー」
「ふっ。仲間の風当たりも、強いな」
「カラ松兄さん、うまい!座布団一枚!」
「じゅうしまぁーつ。お前だけだぞぉ、俺に冷たくしないのは」
「だって僕、兄さんたちみんな大好きだもん!」
「おお、じゅうしまぁーつ!マイブラザー!」
「やかましい!」
一松がカラ松の背中を蹴った。
「アウチ!」
「はい、休憩終了。ほら、立って!」
「はぁ?!もう終わり?嘘だろ?!」
「がんばれー」
「棒読みの応援はやめて、一松!」
「行くよ!はぁあああっ!」
「っ!!でやぁあああ!!」
「まだまだ踏み込みが足らないよ!」
「やみくもに剣を振るっても、駄目だ。しっかり相手を見て!」
一松のアドバイスにおそ松は、しっかりとチョロ松を見た。その目にはおそ松なりの覚悟が見てとれた。
「おっ、いい顔!そのまま踏み込んで!」
「はぁあああっ!!」
「そうだ、その調子!」
「俺も混ざろう」
一松も混ざり、2対1になった。だが今度は文句も言わず、二人を見据えて剣を振るう。その太刀筋はやり始めた時とは比べ物にならないほど、上達していた。
「やるな、おそ松!」
「おそ松兄さん、すごい!」
「僕もまざろー!」
「いいね!相手が弓矢を使う場合を想定できる」
「よっし、来い!」
十四松は前から使っていた弓でおそ松に当たらないよう、すれすれの場所に矢を放つ。弓矢での攻撃にたじろいでいたおそ松だったが、次第に慣れてきた。
「そこだっ!!」
剣が十四松の首を捕らえ、寸前で止められた。
「参りました!」
「これなら大丈夫だね」
「ああ、申し分ない」
「やりぃ!!」
太鼓判を押されたおそ松は、意気揚々とカラ松のところに走った。
「カラ松、お待たせ!」
だがカラ松はどこかボンヤリしているようだった。
「おーい、カラ松ー」
「ん?ああ、終わったのか。短期間でマスターするとはな。すごいじゃないか」
「へへーん。ところでさ、何か考え事?ぼーっとしてるみたいだけど」
「風の泣く声を聞いていたんだ」
「あいたたた!ぐはっ!あばらが折れた!」
「おそまぁーつ!!」