第7章 閉目の可視者
おそ松の目から涙がこぼれる。
「こんなことしてる間にも、母さんの容態が悪くなってたらとか、俺自身が病気になったらどうなるかとか、心配事が山積みなんだよ!褒美欲しさにお前らを助ける余裕なんざ、ねぇんだよ!!」
「人間?!人間がこの世界に来たのか?!」
十四松が崩れ落ちたおそ松に肩を貸しながら、レッドアイたちを見た。
「おそ松兄さんは、人間とロック鳥のハーフなんだ。いつもは明るく振る舞ってるけど、ふとした時に暗い顔をしてたのを、僕は知ってる」
「て言うか、迫害されてきたからって、のっけから多種族をそうやって疑ってたら、ますますひどくなるよね?」
チョロ松の言葉にカラ松が応えた。
「そう思って歩み寄ることもしてきたさ。けど、変わらなかったんだ」
一松はカラ松兄妹を見る。
「お前はそうでもなかったけど」
「お前たちが純粋に、俺たちを助けてくれたのを感じたからだ。それに、先に名乗りをあげてくれた。俺たちレッドアイは輪郭しか見えない分、本質を見ることができるんだろうな。お前たちが悪巧みしているようには思えん」
おそ松たちを囲んでいたレッドアイたちは、お互いの顔を見た。
「カラ松がそう言うなら…」
そう言ってバラバラと散って行った。
「すまない、嫌な想いをさせてしまったな」
「カラ松が悪い訳じゃないよ」
「そうそう。お前らも辛い過去を背負ってるのは、わかった」
「そうだよね。目を開いてたら目を狙われて、閉じたら気味悪いって、どうしろっての」
「ねえ!ゴールドドラゴンにお願いしたら?目を開いても、その目が狙われないようにって」
「いいね、それ」
「その手があったか!………だが俺がいない間、妹の身に何かあったら…」
そこまで言って、自分がおそ松と同じことを言っているのに気がついた。
「おそ松。お前はこういう気持ちを、ずっと抱いているのか…?何ということだ!針ネズミのジレンマ…。エイトシャットアウッ!!それをずっと抱いて旅をするとは…!よぅし、わかった!このカラ松、お前と同じジレンマを抱えながら、旅をしようじゃないか!!」
「やっぱ、いいわ」
スパンと切り捨てるおそ松。
「え」
「お前、痛いし」
「何故だ?!俺は殴ったり蹴ったりしてないぞ?!」
「………お前、純粋なんだな。わかったよ、一緒に行こう」