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千分の一話噺

第32章 俺とあいつ①・向日葵の笑顔


向日葵って太陽に向かって咲く。
太陽の光りを身体いっぱいに受けて笑顔の様な花を咲かせる。


ある夏の日。
俺は畦道を大汗をかきながら自転車を漕いで駅へ向かった。

「ちきしょー!なんだ!この暑さはっ!」
最悪なのは、この夏一番の暑さ、猛暑日どころじゃない。
汗をタオルで拭いても拭いても、噴き出してくる。
熱中症にならないのが不思議なくらいだ。

何故こんな日に急いでいるかって?
それはアイツが帰って来るからに決まってるだろ。

いきなり「海外留学する」って一年間もいなくなりやがって、こっちはどれだけ心配したかなんて気にもしてねぇんだろうな。
「文句の一つも言わなきゃ気が済まねぇ!」
ペダルを踏み込む足にも力が入る。

駅に着いてアイツを探すが、時計を見たらまだ電車は到着前だ。
とりあえず冷たい飲み物を飲んで一息ついた。
更に汗が噴き出してきた。

しばらく日陰で涼むと電車が到着する。
改札口で待っていると、アイツは涼しい顔で出て来た。
「迎えに来てくれたんだ…」
俺を見つけて駆け寄ってきた。
「お前なぁ…」
そう言いかけた時、アイツは太陽を見上げて満面の笑顔を見せた。
「やっぱり夏は暑いね♪」

(卑怯だぞ)
俺は心の中でぼやいた。
その向日葵の様な笑顔を見せられたら文句なんか言えないだろ…。
「…お帰り」
俺の完敗だ。



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