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千分の一話噺

第29章 スイカの気持ち


俺は気が付くと「スイカ」になっていた。

「な、なんだこりゃ?」
動こうにも手も足もない。
もちろん顔もないが、何故か周りも見えるし音も聞こえる。

どうなってる?

俺が訳分からず呆けていると、おばちゃんがポンポンと俺を叩いて、ひょいと持ち上げた。
「これちょうだい」
そう、俺はこのおばちゃんに買われたのだ。

おばちゃんちに着くと台所のまな板の上に乗せられた。
(これってもしかして…)
そのもしかしてだった。
目の前にはキラッと光る包丁。
次の瞬間、俺の体に刃が…。
血(果汁)が滴り俺は気を失った。


次に気が付くと炎天下の下だった。
「暑いなぁ」
どうやら浜辺にいるようだが、やっぱりスイカだった。
周りは人だかりで「右だ」「左だ」言っている。
(これって…)
そうスイカ割りのスイカ…。
「うわぁ~!ちょっと待て!」
今まさにスイカを割ろうとしているのは俺の彼女だ!
目隠しして木の棒を振り上げた。
「わ、わ、わぁ!俺がっ!俺が悪かったぁ!」
振り下ろされた棒は俺の頭をかち割った。
血(果汁)と脳みそ(果実)が飛び散る。



「どわぁぁぁぁぁ!!!」
気が付くと俺の部屋だった。
「ゆ…夢?…か?」


今日、彼女に謝ろう。



end
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