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千分の一話噺

第28章 お引越し


「ふぅ~あっついわねぇ~」
伸ばしいる髪が邪魔になるので、束ねてゴムで止めてポニーテールにした。

今日は、引越しの為の荷物をまとめている。
来週には彼との新居に移る。
この部屋も後数日と思うと、ちょっと感傷的になる。

初めて一人暮らしを始めた部屋。
嬉しい事も辛い事もあったけど、ここが私の落ち着ける場所だった。

「どう?進んでる?
アイス差し入れ!
少し休憩しようぜ
Tシャツ汗だくじゃん」
彼が手伝いに来てくれた。
「だって暑いんだもん
でも、どう?だいぶ片付いたでしょ」
彼がアイスをくれた。
「おいおい、これでか?
散らかしてるの間違いだろ?」
笑いながら辺りを見回した。
「ちょっとぉ、人が一生懸命やってるのに!」
正直、私は片付けは下手かもしれない。
「だから俺が来たんだろ」
アイスを食べながらウインクした。
私も照れ隠しにアイスを食べた。

二人だと片付けも早い。
私が仕分けた物を彼がテキパキと段ボールに梱包していく。
「何が入れてあるか書いておくから…」
「あっ、ありがとう」
やっぱり私は片付けが下手なんだと思った。

片付けている内に懐かしい物を見つけた。
「ねぇ見てこれ!」
「おっ懐かしいねぇ
初めて海に行った時に買ったやつじゃん」
それからは片付けそっちのけで思い出話に花が咲いてしまった。

夏の昼下がり、窓の外は蝉時雨が止まらなかった。



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