第270章 君の瞳に…
彼女の部屋に上がり上着を脱いだ。
すると…。
「かの新撰組局長、近藤勇は愛刀をすらりと抜いて『今宵の虎徹は血に飢えている…』と、言ったとか言わないとか…」
「何だよ?いきなり…」
「だってそのセーターの柄、新撰組の模様みたいじゃない?」
言われて初めて気付いた。
水色地に白いギザギザ模様、確かに新撰組の羽織りや旗の模様みたいだ。
しかし、普通それで新撰組に繋げるか?
そう、俺の彼女は歴史女子、いわゆる歴女だ。
「なんでも歴史と繋げるの止めてくれる?」
「良いじゃない、私の趣味なんだから」
呆れる俺に平然と言い返す。
「…で、さっきの台詞って本当に言ったの?」
「あぁ、あれは後で出来た講談の語りよ
いわゆる演出ね
ほら、信長の『人生五十年』も同じ様な感じでしょ?
元の話しが今みたいな記録じゃなくて、身内や家来が書いた伝記だから大体が悪くは書いてないのよ」
炬燵に入り、ポテチを食べながら話す事じゃない様な気もするけど、しばらく彼女の歴史話しに付き合わないと機嫌が悪くなる。
「何で歴女なんかと付き合ってるんだ?」と仲間からよく言われる。
俺自身、それほど歴史が好きと言う訳でない。
彼女の話しも半分くらいしか分からないが、歴史の話しをしている彼女のキラキラな瞳に恋したのは間違いない。
end