第25章 雨音は殺しの調べ
俺は大雨の中、必死に逃げ回り町外れの廃屋に飛び込んだ。
「ちっ!ここまでか!?」
その刹那、奴の顔が思い浮かんだ。
(あいつならこの状況でも絶対諦めない
探せ!考えろ!何か打開する手があるはずだ!)
追っ手は確実に迫って来ている。
残された時間はそう多くはない。
廃屋の中で使えそうな物を探した。
ガレージに小型トラックがある。
一か八かエンジンをかけた。
『ここだ!取り囲め!』
外が騒がしくなってきた。
その直後、ガレージの扉を破り小型トラックが飛び出した。
激しい銃声が響く。
『くそっ!追え!逃がすな!』
追っ手は車に乗り込み、タイヤを鳴らしながら走り出した。
雨粒が屋根を叩く音しかしない事を確認してから、俺は廃屋を後にした。
「引っ掛かってくれたが、ばれるのは時間の問題だ」
車のステアリングを固定して、アクセルに重しを乗せて暴走させただけのトラックはすぐに止まるだろう。
しかし、逃げるには十分の時間稼ぎになった。
「よう相棒、お前のおかげで命拾いしたよ」
すれ違い様に声をかけると、あいつの顔が引き攣った。
「お前!なんで…」
俺はそのまま人波に紛れ込んだ。
俺の後ろでは悲鳴が上がり、雨音は掻き消された。
end