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千分の一話噺

第23章 満更でもない


『梅雨の合間の五月晴れ』
旧暦の五月ならぴったりの言葉だな。

俺は空を仰いでそんなことを思っていた。
近年の異常気象で季節感が無くなった今では、季節に関係なく長雨が降る。

『ゴールデンウイークが始まったばかりですが、明日からまた梅雨のような前線が日本列島に…』
最近の天気予報はよく当たる。
今日の晴れ間を大事にするか…。
俺は洗濯機から衣服を取り出し庭の物干し台に干し始めた。

この歳で主夫とは、ある意味情けない。
普通の三十路ならバリバリ仕事をしてるはずなのに、妻に養ってもらうとは…。

「パパ~遊ぼっ!」
娘の皐(さつき)が駆け寄ってきた。
「よし、洗濯物干し終わったら鯉のぼり出そうか?」
「うん♪」
皐は返事をすると物干しを手伝ってくれた。

この田舎の家には鯉のぼり用の竿がまだ立っている。
この辺りでは男の子女の子に関係なく、端午の節句には鯉のぼりを掲げるのが風習だ。

物置から鯉のぼりを引っ張りだし、竿のロープに括り付け引き上げた。
「わ~い♪鯉のぼり♪鯉のぼり♪」
皐がはしゃいで庭を走り回っている。

妻に苦労掛けるが、主夫も悪くないな。


見上げると、五月晴れの空に見事な鯉のぼりが泳いでいる。



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