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千分の一話噺

第20章 白亜の灯台


「ほらよ」
俺は彼女にペットボトルを放った。
彼女は慌ててそれを受け取った。
「…ありがとう」
「結構、距離あったな
しかも昨日の雨でぬかるんでたし…」
「ゴメンね
こんなに歩くなんて思わなかったから…」

ここへは彼女への日頃の感謝の様なものだ。
駐車場のある浜から山道を一時間くらい歩いた岩壁の上にある白亜の灯台。
断崖絶壁に建っているこの灯台は、その昔映画の舞台にもなったそうだ。



「この写真は私が我が儘言って連れて来てもらったのよ」

彼女が子供の頃、母親から灯台の写真を見せて貰った時の話だ。
写真の中の両親の笑顔は輝いて見えたそうだ。



彼女からその話を聞いて…。
「ちょっと遠いけど、ハイキングがてら見に行くのも良いか
それにもう三十路だから運動しないとメタボになるしな」
俺は笑って彼女に言った。



澄んだ五月晴れの青空に真っ白な灯台は、その存在感を更に大きく見せた。
そして、その灯台の向こうには煌めく太平洋が果てしなく広がっている。
「しかし凄いな、この景色!
これはここでしか見れないぞ!
苦労して来た甲斐があるよ」
「でしょ♪一緒に来れて良かったわ♪」
彼女は受け取ったペットボトルの水を一口飲んで俺に返した。
俺がペットボトルの水を飲もうとすると、晴天の空から陽の光りが降り注ぎ乱反射して輝いて見えた。


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