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千分の一話噺

第10章 愛しの子羊


深夜から降っていた雨は、昼には雪に変わっていた。

「寒いと思ったらやっぱり雪かよ…」
俺は窓から外を見ていた。
今夜は久しぶりに彼女とデート。
「待ち合わせ時間には雪止んでいてほしいな…」



夜には雪は止んだが意外と積もってる。
しかも待ち合わせ場所は除雪されていない。
街灯が雪に反射していつもより明るかった。

俺は約束の時間にぎりぎり間に合ったが、彼女はメールで「少し遅れる」と言ってきた。
俺は「慌てコケるなよ」と返信しておいた。


しばらくすると白いダウンのコートを着た君が見えた。
俺を見つけると、笑顔で駆け寄ってきた。
「バカっ!走ったら…!」
君は期待に応えるように派手にコケた。
雪の上で四つん這いの君は、雪明かりに照らされ羊みたいだ。
俺は思わず笑ってしまった。

「だ、大丈夫か?」
君の手を取り引き起こした。
「今笑ったでしょ!」
君は頬を膨らまし、俺を睨んだ。
「そりゃあ、あのコケっぷり見ればな…」
俺はまだ顔が笑っていた。
「もう!」
君はぷいと顔を背けた。
「ゴメン、ゴメン
さあ、寒いし何か暖かいもの食べに行こうぜ」

繋いだ手を俺の上着のポケットに入れ歩き出した。
君はまだ膨れっ面をしている。
「笑ったんだから奢ってよ」
「はいはい
で、羊さんは何が食べたいのかな?」
「羊さん?
あっ…ジンギスカンなんて良いかも♪」
「おいおい、共食いかよ…」
俺は苦笑いしたが、訳が解らない君は子羊のようにキョトンと小首を傾げていた。


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