• テキストサイズ

千分の一話噺

第806章 赤と黒 ②


今年は5月の初めにはもう夏日を記録した。
終盤には真夏日になる勢いだ。

俺はとあるビルの外壁を登っていた。
「…まったく、年々暑くなるのが早いよな」
動くと汗をかく。
体がまだ暑さについていけてない。
『ぼやいてないで、さっさと登れ!
後10分しかないぞ』
インカムで秀司が急かす。
「10分もあれば余裕だぜ」
俺はビルの屋上に辿り着くと、即効性の催眠ガスをエアコンの通気孔から流した。 
このビルは空調がセントラル式になっているので、元から流せばビル全体にガスが行き渡る。

「セキュリティーは切れてるんだろうな?」
『当たり前だ、さっさと仕事を済ませろ』
ガスマスクを装着し、屋上の出入り口から侵入した。警報も鳴らないし、警察も警備員も床に倒れている。
「…効き目はバッチリだな」
『謙、無駄口叩いてる暇はないぞ
…後6分だ』
俺は急いで仕事を終わらせた。

「いや~、後2分で木っ端微塵だったな」
『ご苦労さん
…で、獲物はちゃんと確保したんだろうな?』
「あったり前だろ!
俺は怪盗ROSSO&NEROの黒い方だぜ」
俺達が狙っていた獲物のあるビルに時限爆弾が仕掛けられていた。
爆弾解除に少し時間が掛かったが、依頼の宝石『ブルームーン』を持って秀司と合流した。

「…これって明らかに俺達を狙ってきたんだよな?」
「あぁ、何のためか分からないが爆破予告を俺達だけに知らせてきたんだからな」
もし爆発していたら俺だけじゃなくビルにいた大勢も巻き込まれていた。
「どこのどいつだ!?無関係の人間まで危険に晒すとはよ!」
俺は行き場のない怒りで爆発しそうだ。
「…取り敢えず、この『ブルームーン』を依頼人に返そう」
俺達が盗むのは正当な持ち主から依頼された曰く付きの物だ。

奇しくもその日は一月に二回ある満月『ブルームーン』が輝く夜だった。


end

/ 1612ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp