第803章 コロッケよ、永遠なれ!
「あぁ~、コロッケを死ぬ程食いてぇ~!」
俺の大好物はコロッケだ。
あの揚げたてのサクサクした衣、申し訳程度に入っているひき肉、北海道産のホクホクなじゃが芋。
熱々の揚げたてを頬張る幸せ。
ソースを掛けてご飯のおかずに、パンに挟んでコロッケサンドに、弁当にも良いし、蕎麦に乗せても美味い。
「うぅ~、考えただけでもヨダレが止まらん!」
「死ぬ程どころか、食べたら死ぬから…
コロッケだけじゃなく揚げ物全般は諦めなさい」
主治医からしっかり止められている。
俺だってまだ死にたくはないから、コロッケもメンチカツもトンカツも唐揚げもエビフライもアジフライも、全て諦めている。
と言うより食べられる店もない。
時は20XX年5月5日。
日本では伝統的な鯉のぼりが一斉に泳ぎ出した日、最初の患者が現れた。
「コロッケを食べたら急に苦しみだして…」
始めは食中毒を疑ったが、患者は血圧が急激に跳ね上がりその日のうちに亡くなった。
その日から次々と同じような患者が現れ、コロッケアレルギーと呼ばれるようになった。
たった数日で何百人も亡くなった。
原因は分からず誰もが発症を恐れて全ての揚げ物が日本の食卓から姿を消した。
この現象は日本だけに止まらず、世界規模で流行し患者は全人口の四割にもなり、数億人が亡くなっている。
日本から広がったので『コイノボリシンドローム』と呼ばれ、揚げ物料理が世界から消えたのだ。
「どう?トンカツや唐揚げ食えるよ」
黒服の怪しい男が寄ってきた。
違法に揚げ物も売っている闇コロッケ屋だ。
「こ、コロッケはあるのか!?」
「もちろん!一個たったの30万だよ」
法外な価格で取引されていた。
end