第802章 ジジイの煽てりゃ木に登る
その周辺では異様な臭いが漂っていた。
「あの家ですか?」
近所では有名なゴミ屋敷、たまにテレビ局が取材にくる。
住んでいるのは年金暮らしの高齢者、家族も親戚もいない天涯孤独な男性だ。
近くに住む人にしてみれば迷惑この上ない。
春は嵐のような風も吹く。
「このままじゃ不衛生だし、強風で何か飛んでくるんだよ
危険だから撤去してくれ!」
「ゴールデンウィークだっていうのに、臭うからって孫も遊びにこないんだ
何とかしてくれよ!」
市役所にはたくさんの苦情きていた。
市役所の担当者は何度も処分を頼みに行くが、その男性曰く「これはゴミなんかじゃねぇ!」と言い張る。
「これが問題のゴミ屋敷ですね」
テレビ局のスタッフが玄関前で撮影を始めた。
「何勝手に撮ってるんだ!?」
男性が出てきてスタッフと揉め始めた。
「…ふざけんな!これ以上撮るなら警察呼ぶぞ!」
男性は携帯電話を取り出し110番に掛けた。
『…警察です』
「無断でうちを撮影してる輩がいるんだ
すぐに来てくれ!」
テレビスタッフは退散するしかなかった。
誰もが諦め掛けたその時、救世主が現れた。
「じいさん、これ全部買い取るぜ」
「おぉ、やっとこれの価値が分かる者が現れたか!」
「なかなかの品揃えじゃないか」
「そうじゃろ!これをゴミとか言う輩が多くて困るわい!」
救世主はゴミをトラックに片っ端から積込んで、男性に二千円を渡して走り去った。
「…まあ、多少は金になる物があったから、全部で二万五千円だ」
救世主は市役所で処分品の精算をした。
「苦情が多かったから助かったよ…」
「あの手の老人は持ち上げるのが一番だからな」
救世主は廃品回収業者だった。
end