第783章 ドールサーカス
「さあさあ、世にも珍しいドールサーカスがやって来たよ!
みなさんお誘い合わせの上、ご来場下さいね!」
サーカス団のピエロがビラを配っていた。
「ドールサーカス?
聞いた事ないわね」
私はビラを受け取ると…。
「アンティークドールがサーカスさながらに曲芸を披露するんです
世界でもうちだけしかやってませんよ
このビラを持ってくれば二割引でご覧になれます
是非、彼氏や友達、ご家族とお越し下さいね」
ピエロは私にウインクしてみせた。
私は彼を誘った。
「へ~、面白そうだね
人形劇みたいな物かな?」
そういうのもあるかと思った。
会場は市営グラウンドに昔ながらの大型テントを組んであった。
「入場はこちらですよ~!」
ピエロの案内で中に入るとほぼ満席だった。
会場が暗くなって、中央にスポットライトが当たる。
中央には一体の人形が立っている。
「レディース&ジェントルマン!
ドールサーカス開演です!」
人形の口が動いて言葉を発した。
「どうなってるの?」
「見た目はアンティークだけどロボットなんじゃない?」
その人形は始めはぎこちない動きからどんどん滑らかになり、他の人形も登場し本物のサーカスのようなアクロバティックな演技をした。
クライマックスは大砲の中に人が入り打ち出す『人間大砲』の人形版だ。
人形が大砲に入るとカウントダウンが始まる。
「スリー…、ツー…、ワン!」
打ち出された人形は宙を舞い、的が書かれたボードに当たってバラバラに壊れてしまった。
「おやおや、壊れてしまいましたね」
ピエロが登場し壊れた人形を元の形に戻すと、人形は何もなかったように立ち上がってお辞儀をした。
会場は大歓声と喝采が巻き起こった。
しかし、私は見てしまった。
注目が集まる起き上がった人形の反対側の舞台袖で、人間のピエロが人形に蹴られて何かを指示されている姿を…。
end