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千分の一話噺

第781章 マンガのような…


「おはよう…」
「今日は忙しいんだから朝ごはん食べたらすぐに準備しなさい」
炊き立てのご飯に生卵と漬物。
私の大好きな卵かけご飯だ。

こうして家族一緒にお母さんの朝ごはんを食べるのは今日が最後になるのかな?
「お前が嫁に行けるとはな…」
「自分の娘にずいぶんじゃない?」
「はいはい、お父さんも早く食べて準備して下さいね」
三十半ば、正直言うと私自身も結婚出来るなんて思ってもいなかった。




「あっ…」「あっ!」
町の図書館で同じ本に手を伸ばした人がいた。
「…どうぞ」「ありがとう…」
私はその本をその人に譲って他の本を手にした。
(こんなマンガみたいな事があるんだ)
その時はそれくらいにしか思っていなかった。

私は椅子に座って本を読んでいると…。
「さっきはどうも…
これ、読んだのでどうぞ」
「えっ?」
顔を上げると彼はニコッと笑ってさっき本を私に渡した。
「…もう読んだんですか?」
時間にして2時間くらいか?
私はまだ三分の一程度しか読んでないのに…。
「僕、読むのが人より早いんだ」
私より年下に見える彼は私の隣に座って他の本を読み出した。

(は、早い…、何この子、そんなに早くて読めてるの?)
横目で見るとページをパッパと捲っていた。
速読って聞いた事はあるけど、こんなに早いとは思わなかった。
「…僕って変かな?」
私が見てるのを気付かれてしまった。
「いや…、変じゃないけど…、そのスピードで内容が分かるのかな?って…」
苦笑いしか出来なかった。
「よく言われる…」
彼は少し悲しい顔をした。
「…速読ってやつよね?…私にも出来るかな?」
これがきっかけで週末に図書館で会うようになり、お互い読書好きでもあり、あっという間に結婚となった。


ちなみに、彼はせっかちで何でも早く済ませたい性格だった。
でも、二人の仲は長く続いて行く。


end


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