第780章 水の一念岩をも通す?
「先輩、いつも良い香りしてますね
どんなブランドの香水使ってるんですか?」
後輩は目を輝かせて聞いてきた。
「ブランドって程の物じゃないわよ
普通にその辺で売ってる香水だから…」
「そうなんですか?
先輩みたいな美人が着けるとなんでも良い物に見えちゃいますね」
相変わらず調子の良い娘ね。
この娘は大学の後輩で、私の助手をしている。
次の司法試験を受けて弁護士になりたいと言ってはいるが、何回も落ちては落ち込むを繰り返している。
ほとんど勉強している姿を見たことがないので今回も無理だろう。
「先輩!
今日は飲みに行きましょうよ!」
週末には必ずといっていいくらい飲みに行き、私に愚痴を撒き散らす。
「…ちょっと聞いてます!?
司法試験って何であんなに難しいんですか!?
私、次で4回目ですよ!」
「…はいはい、今回も頑張ってね」
「先輩!…もう、私辞めようかな…」
「何言ってるのよ
今まで頑張ってきたのに諦めるの?」
「だってぇ~、覚える事が多すぎて無理ぃ~」
「分からないところはちゃんと教えてあげるから…」
物覚えが良いんだから真面目に勉強すれば受かると思うんだけど、どうも集中力が長続きしないのよね。
そもそもの動機が、「カッコいい」とか「喋るだけでいい」とか不純極まりない。
でも、正義感は強く人に優しい性格だから向いてないわけじゃない。
月日は流れ…。
「先輩、今年こそ受かってみせますよ」
「…そろそろ諦めたら?」
「意地でも受かってみせます!」
彼女は老眼鏡を掛けて、願書に記入していた。
end