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千分の一話噺

第766章 嵐の後の静けさ 前編


春の嵐《メイストーム》か…。

都会のビルの谷間、人目の付かない路上に刃物で刺されたと思われる遺体が発見された。
しかし、現場は昨夜からの暴風雨で綺麗に洗い流されていた。

「ダメっすね…、血痕もゲソ痕も雨で流されてますよ
…ここで殺害されたのか、殺害されてから遺棄されたのかも分からないっす」
鑑識が頭を抱えた。
「…死亡時刻は?」
「昨日は冷え込んでたから、司法解剖しないとなんとも…」
気温が下がって雨に濡れれば体温は急速に下がり死後硬直も早い。

「…凶器もなしか」
「被害者《がいしゃ》の財布やスマホもないですね」
「財布を持ち去っているが高級時計はそのままか…
物取りじゃなさそうだな」
被害者の身元を示す物も犯人の手掛かりとなるような遺留品もなく、周辺には現場を撮す防犯カメラなどもなかった。
「昨日の嵐じゃ目撃者も期待出来ないな…」
初動から難航しそうな予感しかなかった。

地元の警察署に捜査本部が置かれ、本格的な捜査が始まった。
解剖の結果、死因は刺された事による失血死、死亡時刻は昨夜の午後10時から午前4時の間、やはり死亡時刻には幅がある。
鑑識からは所持品の報告があった。
「被害者の上着のポケットに干し葡萄が入ってました
それ以外は何もありません」
「…干し葡萄?」
捜査員はみんな首を傾げた。

まずは、被害者の身元確認と現場周辺の聞き込みだ。
俺は被害者の身元調査にあたった。
被害者は高級ブランドの濃いグリーンのジャケットを着て、高級腕時計をして、靴も高級品を履いている。
「腕時計ならシリアルナンバーで顧客が分かるかも…」
問い合わせると被害者の身元が判明した。


to be continued…


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