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千分の一話噺

第8章 初雪


一富士・二鷹・三茄子。

昔から初夢に見ると縁起が良いとされるもの。

富士は『日本一』とか『無事』を…。
鷹は『強い』とか『高い』を…。
茄子は『事を成す』を、それぞれ表していると言われます。

年が明けて二日から三日にかけて見る夢が初夢とされてまして、枕の下に宝船に乗る七福神の絵を敷いて置くと、良い初夢が見れるとも言われております。

もちろん諸説ありますが、昔の日本人はよく縁起を担いだものです。


「よし!今年は良い初夢見るぞ!」
A氏は気合いを入れて布団に入りました。

(どんな夢見れるかな?
金持ちが良いよなぁ…
スターでモテモテってのも捨て難い…)
A氏は妄想で興奮して寝付けません。

「いかん!寝ないと夢が見れない!」
至極当たり前のことです。
ですが目が冴えてしまったA氏には、なかなか眠気が訪れなかったようです。

そこで思いついたのは、やはり古くからの言い伝えのあの呪文。

「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が四匹、羊が五匹、羊が六匹、羊が…
…(中略)…
…百匹、羊が百一匹、羊が百二匹、羊が百三匹、羊が百四匹、羊が百五匹、羊が百六匹、羊が…」

A氏は羊を数え続けました。

「…羊が一万七千三十六匹、羊が一万七千三十七匹、羊が一万七千三十八匹、羊が一万七千三十九匹…」

そして、もうすぐ夜が明けようとしていました。
それでもA氏は羊を数えています。

「…羊が二万四千五百八十七匹、羊が二万四千五百八十八匹、羊が二万四千五百八十九匹、羊が二万四千五百九十匹…」

朝日が昇り、部屋の中が明るくなりA氏は目を覚ましました。

「…夢で羊を数えてた…」

A氏の初夢は、沢山の羊に囲まれた夢だったそうです。
羊年の初夢だから、これもまた縁起が良いのかも知れません。


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