第747章 果樹園
娘は小学三年生、生意気な事を言い出す年頃だ。
「パパ、今度の休みはみかん狩りに連れてってあげる!」
「みかん狩り?
…で、どこに連れてってくれるんだい?」
「う~んとね、ママと相談して決める!」
実際連れて行くのは僕なんだけどね。
みかんが大好きな娘はこの時期のみかん狩りをずっと楽しみにしている。
11月になったとはいえ今年はまだ秋の陽気だ。
紅葉も遅れてるし、晴れるとちょっと暑いくらいだ。
今日の天気予報は晴れるらしい。
「ママ、果樹園は暑いかな?」
「山の麓だし、街中よりは寒いんじゃない?」
「パパもママも、上着はちゃんと持ってくのよ!」
「「はいはい」」
娘はすっかり引率者気分だ。
隣の県の果樹園を予約してある。
車で1時間半くらいの場所で、去年も行った所だ。
山の麓のなだらかな斜面に畑が広がっている。
果樹園なだけに、みかんだけじゃなく梨や柿も実っている。
隣には葡萄棚もあり、葡萄狩りも出来る。
「風がちょっと冷たいけど、ちょうど良い天気だね」
山からの木枯らしが吹くと上着を着てきて良かったと思った。
「みかん、いっぱい採るわよ!」
娘は大はしゃぎだ。
「…梨や柿もあるんだよ」
「私はみかんが好きなの!」
他には目もくれず、みかんの木にまっしぐらだ。
一途と言うか頑固と言うか?、誰に似たのやら…。
「ママ、僕らは何採る…」
「柿に決まってるでしょ!」
ママは大の柿好き、柿の木に突進していった。
「…僕は梨と葡萄にしよう」
去年と全く同じ景色だ。
まあ、それぞれ好きな果物を収穫して満足出来た。
「どう?私が選んだだけのことはあるでしょ!」
娘はすっかり上機嫌だ。
木枯らしが冷たかったけど、良い休日になった。
end