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千分の一話噺

第720章 天気図と女心はなんとやら…


「やっぱりバーゲンのセーターは温かくないよな」

彼からそんな言葉を聞いた。
その時に着ていたセーターがバーゲン品だった。

私はその日から手編みのセーターを作り始めた。

編み物なんてやったこともないし、基本的に不器用な私が出来るのか不安しかなかった。
「お母さん、編み物教えて!」
頼ったのは母親だ。

母は私が子供の頃は、セーターはもちろん手袋やマフラーも編んでくれた。
「…最近、編んでないから上手く出来るか分からないわよ」
「編み方教えてくれれば自分でやるから…」
私が編まなくちゃ意味がない。

毛糸と編み棒は用意しておいた。
今から始めれば、来年の冬にはなんとか間に合うだろう。
その日から、毎日毛糸と編み棒との格闘が始まった。

雨の日も風の日も、花粉が飛ぼうが猛暑になろうが…。
月日は流れ、あれからもうすぐ一年が経つ。

「電気予報見た?
来週は真冬の天気図になるらしいよ」
彼は天気予報士を目指している。
「雪降るの?」
「雪は降らないと思うけどかなり寒いと思うよ」
これはチャンスだと思った。

次のデートの日…。

「あれ?そのセーターって手編み?」
「自分で編んだんだけど上手くいかなくて…」
「へ~、編み物出来るんだ?
俺にも編んでよ」
「ダメよ、バーゲン品より出来が悪いわよ
ブランド物を着こなしてる人には似合わないわ」
「…嫌みかよ
俺は別にブランドになんか拘ってないよ」

前の貧乏彼氏と別れてからも編み物は続けセーターは自分用にした。
今度は今の彼のために編もうと思う。


end


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