第506章 始まりはいつも突然に…3
オフィスで挨拶だけして、先輩が寮へ案内してくれる事になった。
「一つ聞きたいんですが、前の人は何で辞めたんですか?」
見た限り職場の環境は良さそうだ。
「彼は別の会社の社長になったよ」
意外な答えが返ってきた。
「…ヘッドハンティングですか?」
「ここで仕事してると珍しい事じゃない
俺もお前もいずれはどこかの社長か国会議員になれるさ」
この時は言ってる意味が分からなかった。
「ここが社員寮だ」
「ここってさっきの村役場では?」
バス停の目の前の立派なビル、土居中村役場だった。
「役場は三階までで、その上はここに単身赴任で来ている各社の社員寮代わりになってるんだ」
部屋に入ると、都会の高級マンション並みの間取りの部屋だ。
「こんな豪華な部屋が社員寮?
…先輩、この村ってどうなってるんですか?」
あまりにも異常な状況に思えた。
「ふっ、そのうち分かるさ…」
まただ。
一瞬だが先輩の顔が変わった様に見えた。
会社に戻ると誰もいなかった。
「あれ?誰もいない…?」
「もう始まるのか…俺達も行くぞ」
先輩に連れられオフィスビルの地下へ向かう。
「先輩、何が始まるんですか?」
「お前みたいに新しく赴任してきた社員の入隊式だ」
「…入隊式って?…えっ!?」
いつの間にか俺の両脇に見知らぬ男が付いていた。
「な、何するんだ!?」
その男達に両腕を押さえ付けられた。
「お前にも隊員になってもらう」
「せ、先輩!これはっ!?」
先輩は何も言わず先を進んだ。
地下の扉が開くと、そこはまるで中世の城の中の様だ。
「偉大なる魔王ヴァイス様、新たな下僕が揃いました」
一番奥に巨大な椅子があり、異様な男が座っている。
「ま、魔王!?せ、せんぱ~い!?」
「ふふふっ、心配するな
魔王様の血の洗礼でお前も魔王軍の一員だ」
抵抗しようとしたが…。
ここ土居中村は、魔王が影で支配し下僕とした人間を社会に送り出し、人間界を支配する準備をしているのだった。
end