第26章 君と私の約束五箇条❥伊達政宗
「え、約束...?」
私は自室で素っ頓狂な声を上げていた。
「あぁ、そうだ、約束だ。」
いつもの面白そうな顔に似合わない真面目な顔を浮かべているのは、
私の恋仲の、政宗。
政宗がいきなり部屋に入ってきて何を言うかと思えば約束を作ろう、とすごく真面目な顔で話しかけてきたのだ。
「な、なんなの、約束って?」
私はその”約束"という意味が分からずに頭をひねる。
「だから、俺とお前で約束を作るんだよ。」
「いや、それは分かるけど...なんで急に?」
政宗はそもそもその約束というものの類が嫌いではなかったのか。
「え、政宗って、約束とか、不確かなものは嫌いなんじゃなかったの...?」
気になって恐る恐る聞く。
すると政宗はまだ真面目な顔で頷いた。
「あぁ、それもそうなんだが....今回は理由がある。」
(え、理由?)
「理由って何?」
私がそう聞くと、政宗はいつもの笑みを浮かべた。
「いいや、理由は言わない。だが、約束してほしいことがある。」
笑みを浮かべたかと思うとすぐにまた真面目な顔に戻った。
「な、なに...?」
それにただならない空気を感じた私はそっと聞く。
すると、政宗はいきなり人差し指を私の前に突き出した。
(え、なに...?)
突然のことに困惑していると、
「いーち!知らない人についていかないこと!」
と、政宗が声を張り上げた。
「え、えっ!?」
それにも私は困惑する。
いきなりどうしたというのか。
でも政宗は止まらずに続けた。
「にーい!怖い人を見つけても近寄らないこと!」
「え、ええ...?」
「さーん!何かあったらすぐに声を上げること!」
「な、なにそれ...」
「よーん!暗い路地には入らないようにすること!」
「え、ほんとに何..?」
「ごー!一人で城下をうろつかないこと!」
そこまで言うと、政宗は言い切ったーと言わんばかりのかおをして私を見つめてきた。
「え、な、なんなの...?」
今目の前で行われたことの意味がわからずに頭を悩ませる。
だが、政宗は最後に五本の指を私の前に突き出すと、
「これが、俺とお前の約束五箇条だ!」
「は、はい...?」
あまりにも一方的な政宗に変な声が出てしまう。