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戦国ヒロイン【織田家】

第3章 時代の革命児


1534年 5月12日

勝幡城に一つの産声が響いた。のちに日本の戦国時代を切り開く革命児、織田信長、吉法師の誕生だった。

母の織田信秀はある時、尾張の国の中央部にある那古野に来て堅固な城を築くように命じた。この城に、吉法師を住まわせた。
平手政秀などの家老らと、吉法師より少し年上の少年である司馬頼継と一緒に那古野の城に住んだ。
なにかと不自由なことが多かったが、指南役の司馬頼継と共に天王坊という寺に通い学問を習っていた。
母の織田信秀は那古野の城は吉法師に譲り、自分は熱田の近くの古渡に新しい城を作って、そこを居城とした。それが、1544年の頃であった。

「ねえ、頼継…」

「何ですか?」

那古野城の一部屋、吉法師様と俺は書物を読みながら駄弁っていた。

肩まで伸びた黒髪、吸い込まれそうな大きい黒い瞳、隣にいるだけでふわりと香る花のような匂い、透き通る白い肌。
かつて唐の時代、安禄山の乱が起きた要因の一つは、楊貴妃と呼ばれる国を傾かせるほどの美女が原因だったとされる説がある。吉法師は、まさに傾国の美女そのものだった。男女身分問わず見たもの全てを虜にする、そんな力があった。

「いつになったら、こんな戦乱が終わるのかしら…」

憂いの表情で空を見上げる。何をしても絵になるのは、彼女くらいしかこの日ノ本にいないだろう。

「さあ…いつでしょうね。私たちが生きている間は、終わらないのかもしれませんね」

「戦が続けば民は苦しむ。民が苦しめば兵が苦しむ。生きる為に戦が始まる。この悪循環はどうしようもないの?」

「だから戦乱を終わらせたい…。そういうことですか?」

「ええ。苦しむ天下なんて、何の価値もないもの」

「吉法師様は、お優しいのですね」

「優しさなんて、姫武将に必要とされない。でもこの戦国を終わらせるには、優しさが必要だと思うの。…頼継?」

「何ですか?」

「もし私が戦場に立つ時が来たら、私は戦国を終わらせたい。力を貸してほしい。あなたにはずっと側にいてほしいの…」

「ええ。側にいますよ。いつまでも…」

(たとえ戦場で命を落とすことがあっても、あなたが生まれたあの日から…ずっと側にいると心に誓いましたから)
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