第14章 ☆Story32☆ 逃げられない
ジュリが部屋を出ていき
ゆりはホッとひと段落し起き上がると病衣を着直した。
「っ……」
(助かった……)
「……おい、」
「っは、はい!?」
東郷に突然声を掛けられ驚くゆりはビクッと肩を上げた。
顔を見上げると少しイラついているのか眉間に皺を寄せていた。
「何オレ以外の男に襲われてんだ?」
「っそ、そんなこと言われたって……私は何も……」
「……オレはこの後出かける。夕方までには戻るが、
またさっきみたいな事があればお仕置きだからな……?」
「っ……」
(っ何で何も悪くないのにそんな事されないといけないの……!?)
「……他の奴らにもキツく言っておくつもりだが、
さっきみたいに無防備なとこ見せんじゃねぇよ。」
「っ……はい、」
(確かに……気をつけなきゃ……)
ゆりが俯くと東郷はゆりの顎を持ち上げ……
「……。」_グイッ
「っ!?」
_チュッ…
「んん…!///」
そのままゆりの唇へ落としキスを交わす。
ゆりは東郷の胸板を叩き離れるよう促した。
数秒間、唇を合わせると東郷は唇を離した。
「っいきなり何するんですか……!///」
「そんなふうに隙を見せるから襲われるんだ。
無防備なとこは俺だけに見せてりゃいい……いいな?」
「っだから……私は憲吾以外……」
ゆりはキュッと唇を噛み視線をずらした。
「……とにかく、必要最低限この部屋から出るな。」
「……。」
東郷はしばらくゆりを見ると
ジャケットを羽織り部屋を出て行った。
「っ……」
(っ早く、助けこないかな……ライブだって明日に迫ってるのに……)
ゆりはベッドの上に蹲まり身体を縮こませた。
するとふと視界にネックレスが目に入ってきた、それはゆりが
まだ赤ん坊の時に母親の百合から引き継いだものだ。
「っ……!」
(っそうだ……今日はパパ達が来るんだ……っパパ、
今ホテルにいる私が私じゃないってて気づくかな……)
ゆりはギュッとネックレスを握りしめ…
「っ……ママ、パパ……助けて……
っユウ……ユウもどこに居るの……会いたいよ……」
身体を震わせながらしばらく静かに泣き続けるのだった……。