第1章 ♥︎ ONCE ・ AGAIN ♥︎
「潤、お前何言って———」
「聞きましたよ、まだニノとキスできてないって」
それを言われた途端、愕然とした
顔をする俺のヘタレ恋人の翔ちゃん。
くふふ、良いぞ良いぞ潤くん!
翔ちゃんも困ってる、いい気味なんだ。
潤くんの作戦はね、翔ちゃんに『嫉妬』
させること、なんだって。
不安がってるっていう設定の俺が
他の男に目移りしたら、慌ててでも
取り戻そうとしてくれるんじゃないかって。
それでキスでも、えっちでもしてくれるんじゃって。
ほぉんと、完璧な作戦だよね。
潤くんは天才すぎる。
潤くんが俺の腰に回した腕をまた強く
引き寄せて、翔ちゃんを挑発する。
「ニノが不安がってたんですよ?」
「だから、なんで……」
「キスもしてくれない、もちろんそれ以上の事も。本当に自分の事を好きなのかって、不安がってるんだよ」
…潤くん、ちょっと前から思ってたけど
やっぱり嘘つくのも、演技も上手な気がする。
嘘だって分かってる俺でも、なんかこう
胸のところがドキドキするんだもん。
こりゃあ、女の子にモテモテですわ。
俺は黙って翔ちゃんと潤くんのやり取りを見守った。
「だから俺がニノの事貰って良いっすか?」
「………」
「見ろよ、ニノ。これが答えだって」
黙って口を噤んだ翔ちゃんを見る。
眉間にシワを寄せて難しい顔してさ。
うんとも、すんとも言わないの。
…なんだ、そういうこと。
やっぱり翔ちゃんはさ、俺の事 ———
「…嫌いなんだね、翔ちゃん」
「え、かず…?」
「もう良い、分かったから…」
「あ、ニノ?」
俺は潤くんの両頬を引き寄せて、
自分の顔を近づけたんだ。