第1章 ぜろこ
昔から、仲のいい男の子。
「どうしてないているの?」
「おとうさんが、おかあさんをいじめるんだ。
ぼくも、すごい、つらくて…」
初めて会ったのは五歳の時。
彼は傷だらけで、泣いていて、放ってはおけない、と思ったの。
「これ、あげる!」
「え…、なぁに、これ」
「マカロン!わたしのこせいなの!」
甘いものでも食べたら、気が楽になるんじゃないかと思ったのよ。
「おいしい…!」
それだけだったのに、彼は泣き出してしまったの。
きっと、誰かの優しさに触れる機会が少なかったんだわ。
「そう、よかった…」
「っ!あれ!きずが、なおってる…」
そのあとも、何度も何度も私は彼の傷を直した。
そして知ったの。彼がこんなに傷ついているのは、彼がヒーローになるからだって。
私、名案を思い付いたのよ。
私もヒーローに憧れる子供だった。
彼の傷を癒して。そして強い。そんなヒーローになりたかった。
必死に頼み込んで、彼と一緒に稽古をつけてもらうことにしたの。
私の父もヒーローで、頼み込んだ相手のエンデヴァーおじさまと知り合いだったから、一緒に頑張ってくれて、晴れて私は彼、轟焦凍と稽古を共にするようになったの。
それから冷おばさまのことや、色々なことがあったけれど、私はずっと焦ちゃんと一緒にいる。