第4章 教え
翌日の早朝、珍しく早起きのウチは紅茶を飲む為に共同キッチンでお湯を沸かしていた。やかんのお湯が沸騰するまで椅子に腰かけ待つ。
「おや?天月さんは早起きなんですね」
キッチンに入ってきたのは、ロイ・レビアだった。
「お早う御座います」
顔は一切向けず背を向けながらの挨拶。それに不快に思うこともなくロイは優しく話しかけてくる。
「どうですか、この学院には慣れましたか?」
「ロイさんは……逆にどう思います」
「うーん」
ウチの言葉に彼は悩ましげに息を溢す。
あーあ、そんな真剣に悩むことないのに……
「別に答えなくてもいいですよ。私も答えるつもりないので」
「そうですか」
「あ、ロイさんも何か飲まれます?」
「じゃあ私も紅茶で」
真向かいの椅子が引かれてロイは静かに腰かける。
ああ、そうだ。もしさし使いなければ、人間世界のことを教えていただけませんか?」
「……え?」
ニコリと微笑むロイに一瞥送り言った。
「どんなところって言われても……普通としか言えない」
「そう……ですか」
「…………」
「何かふべんに思うことはありませんか?」
「いえ、特には」
……
授業が終わりこっそりスマホを見ると、22時となっていた。
あまりの眠さに目を擦る。
この魔界の世界では、学校に登校するのは夕方で、授業が終わるのは11時過ぎである。
(眠い、怠い、きつい、めんどい……)
3原則ならぬ4原則を心の中で唱えながら、とぼとぼ歩く。
女子寮に入ろうとした時、男子寮から異様な気配を感じた。そこを何気なく見ていると後ろに引っ張られる感覚を覚え、左肩を掴まれている手を払おうと後ろに手を伸ばす。
誰かの胸に手が当たり一瞬時が止まる。
「………なんですかフェンさん」
「どうしたの? そんなに焦って」
「今私の肩掴みましたか?」
「掴んでないよ。話しかけようとしたら急にわたわたしだしたから、心配になってきたんだよ」
彼が嘘を言っている様子はない。
フェンの胸に当てたままだった左手を下ろそうとするが、フェンに手首を掴まれて阻止された。
「なんですか」
「俺はこのままでも別にいいけど」
「触るなど変態!」
そんな天月の毒舌をものともせずに、フェンは私の左手を持ち上げて……
「ねえベビちゃん、今夜俺と一緒に寝ない?」
さっと手を下ろす。