第7章 お嬢様の涙
「………っ」
高く、艶やかに。
脳まで痺れるように甘く甘く、啼いた、あと。
彼女の体はくたりと、ベッドへと沈んでいく。
その姿がとてもキレイで。
とても、色香を含ませて艶やか、で。
無意識に唾液が喉を通り抜けた。
「はい、せ」
鼻から抜ける吐息。
しっとりと汗ばんだ体。
蕩けた表情で瞳を潤ませて。
少しだけ空いた唇からは、真っ赤な舌が見え隠れしている。
「━━━━っ」
やばい。
駄目だ耐えろ。
大人、なんだから。
今は彼女のためだけに触れているだけ。
自分の欲望なんてどうでもいい。
彼女を、救いたい。
それだけなんだから。
「……お嬢様」
荒く吐き出される吐息にも。
「楽には、なりましたか」
蕩けた瞳で見上げるあどけないその表情にも。
全てに、煽られる。
「はいせ、もっと」
なのに。
「ハイセ、お願いもっと……っ」
「!!」
無意識なのか、それとも意識なんてもの、すでになくしてしまったのか。
彼女は自分からねだるように首へと両手を回し、唇を引き寄せた。
普段とは違う、彼女に戸惑いながらも。
懸命に舌を絡ませて吸い上げるその拙い口づけに、我慢なんて出来るわけもなく。
気付けば自分から彼女の頭を引き寄せ貪るように甘い媚薬のような口づけに夢中で舌を絡ませた。
「……今日はずいぶん積極的ですね」
それでもなんとか残る理性で彼女を引き剥がし、誤魔化すように唇を拭う。
「だってからだ、熱い……っ」
「どうして欲しい……?」
唇をまた奪おうとする彼女の唇を右手で止め、首筋へと舌を這わせた。
「皇、どうして欲しい?言って」
いつもと違う皇なのは知ってる。
それが薬のせいだと言うことも。
こんなに積極的な皇は初めてだったし、こんなに求められたのも。
だから。
少しくらい、言葉にして欲しかったんだ。
なけなしの理性とやらが崩壊するかもしれないと知っても。
いつもなら見れない皇を。
見てみたいと思った。