第17章 一念発起
次の日…本当に衣月は楼央院を出た。
思い出の場所でもあるこの寺院。
21歳くらいから三蔵法師となり、旅に出るまで住んでいた。
もう、訪れることがないんだと思うと寂しい気もしたがそれが自分の選んだ道なのだと衣月は思う事にした。
『煌玄三蔵法師さまっ!!』
呼び止めたのはこの寺の責任者を任せられている尼僧だ。
『何?あたしはもう決めたから戻らないよ。』
衣月はその尼僧を睨みつけて言った。
『分かってます…煌玄さまが三蔵法師を継いだ事をよく思って居なかったもの達がいた事、承知しておりました。それなのに私はそヤツらを信じてあげたかった。変わるのだと。私の名もアナタ様の師匠が与えて下さった。奴らは破門とします。もし、機会があればお立ち寄りください。ココはアナタの育った実家でもあるのですから。』
この尼僧は天楼(てんろう)という。
衣月が先代の実の娘でその父親が光明三蔵だと知っているただ1人の尼僧で先代と衣月が信頼している尼僧の1人。
『あんたならそう言ってくれるだろうと思ったから何も言わずにこうやって出ていこうとしたのに…見つかったか…ありがとう…天楼…』
衣月はそう言って心から微笑んだ。
『煌玄三蔵法師さま…いえ、衣月さま…しっかりと治療を行えば子を成すことが出来ます。今度来る時はこの天楼に孫を抱かせてくださいませ。』
天楼はこう言って微笑んだ。
『分かったよ…その時まで元気でいるんだよ。』
『はい。お元気で…』
衣月達は楼央院を旅立った。
また会うことを約束して……