第2章 一戦を越えて
「ま…どーせそんなことだろうと思ったよ…学校からの依頼は大抵がコレだ」
「そうなんですか…」
ひよりは心配そうに少年を見つめる。
「多いよイジメは…どうしようもなくなってオレみたいのにすがってくる…」
夜トは前髪を左手でかきあげると、溜息を吐いた。
「なるほど。ワラにもすがる思いで…」
「神ね」
ひよりは夜トを全く神とは思っていないようだ。
そんな中でも、少年は泣き止まなかった。
「どうして僕ばかり…」
雪音は情けなく涙を流す少年を横目で見る。
「もうこんな所嫌だ。どこか遠くに行きたい…!」
雪音は逃げ腰発言をする少年を強く睨んだ。
「それは同族嫌悪だ、雪音…」
「?」
雪音は背後からの声に振り返ると、そこには眉を寄せて頭を押さえて痛みに耐えているかのような夜トがこちらに目を向けていた。
「それにイラついてんのがわかるぞ。さっきから頭が痛ぇ…」
夜トは疲れるとでもいうように壁にもたれ、息を吐きだす。
その様が雪音の勘に触れたのか、雪音は夜トをキッと睨めば、「こんなヘタレと一緒にすんな!」と、叫び、扉を乱暴に閉めて出ていってしまった。
「雪音君…っ」
バタンっという大きな音がひよりの声をかき消した。
「あいつはすぐキレやがる…」
夜トもこればかりはどう使用もないとばかりに頭をかく。
少年は身体を震わせながら、雪音が出ていった扉を見つめている。
すると少年を見て夜トが口を開いた。
「…学の場合は雪音みてぇに少しぶちまけるぐらいが丁度いいかもな…」
「?」
夜トはそう言うと、不思議がる少年…“学”に、ポケットからある物を手渡した。