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俺の居場所【ノラガミ】

第1章 時化る日のノラたち


闇に吸い込まれそう静かな夜。
夜トはひとつのペットボトルに社の清めの水を入れていた。
ーーーーーーピチャン。
ふと、前に目を向けて見れば、そこには全身に文字が書かれ、頭に三角の型をとったものをつけている少女が。
「それじゃ治らないみたいだね 夜ト」
少女は水が汲んである石の上に座っている。
笑っているのか、そうではないのか。
少女の表情は、分かりにくい。
「あたしを使えばいいのに」
少女が吐き出した言葉は、情緒がなく、感情がないように聞こえた。
夜トは少女をその薄青色の瞳で一別すると静かに口を開いた。

「……野良」
少女は野良と呼ばれた後、軽く息を吐き、肘を膝に置き、頬杖をかいた。
「あたしずっと夜トのこと見てたのに全然呼んでくれないんだもん さみしかったな」
小さな、しかし奥行きがある声で少女は続けて言う。
「そんな体であんな不安定な神器使うなんてどうかしてるよ」
「……」
夜トは反応しない。
「あんなコ捨てちゃえばいいのに」
少女はそういうと、どうやったかは分からないが、確かに夜トの背後にいた。
そして腕を前に回し、抱きしめるような形になる。
「あたしがいるよ」
耳元で冷ややかに囁く。
「あたしを使って…あたしならあのコより力になれる」
夜トは水に沈めているペットボトルを見たままだ。
「今のままだと手に負えないでしょ?」
感情のない声が夜トの鼓膜を刺激する。



「あたしが夜トを守ってあげる…」
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