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名探偵コナン -造花の真実(トゥルース)-

第1章 File:0 献花



* * *


薄暗い空間に、人ひとり分の足音が響く。

それがすぐ近くで止まった時、革製のソファに腰掛けていた女は顔を上げた。


「──貴方が、“RUM”?」


ラム。それは、何の呼称なのか。

この組織のことを知る人間ならば、誰もが知っている名だ。


「…ご機嫌よう、ベルモット」


女──ベルモットは口元に笑みを飾った。

また一つ、力を手に入れることが出来たからだ。


この組織の人間の多くが知らない、“RUM”という人間の顔と声を知れた。それはとても大きな力となる。なぜなら、多くの人間が知らないことだから。


ベルモットは長い金髪を指先で後方に払うと、ソファから立ち上がった。


「嬉しいわ。ようやく会えて。…あの方にいくら頼んでも、頷いてくれなかったの」


ラム、と呼ばれた男は少しだけ微笑むと、ベルモットの長い髪を一房指先に絡め、緩々と唇を綻ばせた。


「…美しい人。僕と楽しいゲームを始めましょう」


ベルモットは笑った。そうして、目の前にいる“RUM”の姿を上から下まで眺めた。

その姿が本来の姿なのかは分からないが、こうして会うことが出来た。それだけで良しとしよう。

ベルモットは引き出しに入れていた物を取り出し、“RUM”に手渡した。


「言われた通りに用意したわ。準備は万端よ」


“RUM”は手渡された物を一瞥すると、満足そうに微笑んだ。


「流石ですね。では、参りましょうか」


──それは、ドイツ行きの航空券だった。

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