第15章 紡ぐ 色とりどりの物語(1期最終話)

「俺は大丈夫だよ。だから無理しないで」

ひどい事をしたのに彼はそう言って笑うと私を抱きしめてくれた。
背中を優しく撫でる手はよく知っている手だ。

この香りもいつも私を助けてくれる。
その温かさに昂った気持ちが冷静になるのを感じる。


「痛かったですか？ごめんなさい......」

もう一方の彼の手に触れると逆に握り返された。


「俺は平気。みょうじさんの方がずっと痛い」

優しく微笑んで傷ついた右手を包み込んでくれる。


そうだよ......落ち着け。
取り乱しても何の解決にもならない。

今、私が焦ったって何も変わらないーー。


「どうしたの？」

「皆さんに聞いてほしい事があるんです」


私を中心に皆がソファーに腰掛けた。


「話を聞いておかしいと思いませんでしたか？ガンダーラが『売れると思ったら掌を返した』なら......本当にFMJ歌謡祭やライジンフェスの仕事を事務所自ら潰す真似をするでしょうか？

それに一番おかしいのは『私達がA&Rになり、トントン拍子で人気が出ている』『移籍の話が出ている』という事......」

その言葉で彼らなら理解してくれたと思うけど、新人の私達で人気が出るのならそれは皆の力だ。

夜叉丸さんならもっと簡単に今の状況まで持って来れたはず。