第9章 バースディ
しばらく抱きしめてから、ふいに真面目な顔をしてわたしの目を覗き込む。
でも、躊躇するように開きかけた唇が閉じる。
「どうしたの?日々人?」
「…ゆめ、結婚するの本当に俺でいい?
さっきレストランでもちょっと話したけど、宇宙飛行士は、いつ死んでもおかしくない危険な仕事だ。
そうじゃなくても宇宙に行けば、3、4ヶ月帰れないし。
よく、考えて…」
話を遮るようにキスをする。
ビクリと日々人の体が揺れる。
ゆっくりと唇を離す。
「わたしは日々人と結婚したい。
もし、命が危ないくらい危険な目に遭っても、わたしがいたら、日々人は生きて帰らなきゃって思うでしょ?
だから、大丈夫だよ。」
ぎゅうっと日々人がわたしを抱きしめる。
「うん。絶対ゆめんとこに生きて帰る。」
「うん。」
わたしも日々人をぎゅうっと抱きしめる。
まだ少し明るい空に、今日貰ったリングみたいな一番星がキラリと瞬いた。