第15章 【2019年版】Xmas②(MCU/鷹and邪)
そうして暗然たる感情を持て余しつつ服の裾を握り締めて俯く俺を見下ろしていたロキは、玉虫色の外套を大袈裟に翻しながら距離を詰めてきたかと思うと、我ながら情けない引け腰にスルリと腕を絡めてきた。
「なんだ……!」
「騒ぐな」
ソーやスティーブと並ぶと細身に見えたロキも意外と筋肉質らしい。クリントに擬態していた時も思ったが、ある程度の腕力も備えているようだ。慌てて半身を引いて逃げを打つのに簡単に抱き寄せられた事には驚かされた。ハルクには敵わないというだけで純粋な近接戦闘では人間を超える可能性もある。仲間内には度し難い事実にも身体の冷えが止まないでいれば、とうとう包み込まれる様に抱き締められてしまった。俺の周囲は体躯の優れた奴ばかりで本当に嫌になる。
「相変わらずうさぎのように小柄で可愛らしいな」
「っ」
「本当にお前は可愛らしい」
「ひっ」
ロキの甘晒したテノールの声がねっとりとこめかみを降りて内耳を擽った途端に肌が泡立った。台詞回しや声の質感が何処ぞの雷神と重なる。二人は血の繋がらない兄弟だと言うが、結局のところ育った環境は同じなのだ。姿形こそ真逆で異なるとはいえ、こういった状況になれば彼らが兄弟である事を強く実感する。直接こんな事を言えば反抗期真っ只中のティーンのようなロキは激昴するだろうけれど。
「さて……先程の続きをしようか、レイン」
「えっ」
手の早さもお兄様そっくりだ。恐らく魔法の類だろう、お誂え向きに背後へ具現化されたベッドへ瞬く間に寄り切られてロキもろとも倒れ込むと、粗雑な手付きで着ていたパーカーをインナーごと一気にたくし上げられた。熱を持った男らしい掌でさらりと腹を撫でられた瞬間、視界がしたたかに明滅する。
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