第23章 ご城下らぷそでぃ【S×O】
急かすことなく、黙ってさとの答えを待つ。
果してさとは、本音を聞かせてくれるのか……
「……私は…本当は…」
目を伏せて、言ってもいいのか、言わぬままでおこうか。
悩んでいる様子のさと…
さて。
どんな言葉で応えてくれるのか?
「お千代の方様と翔さまが一緒にいる夜は、さとは…いつも…」
そこまで言って、まだ悩むのか?
もう聞かせてくれるまでは、引き下がれぬぞ。
「いつも、どんな気持ちでおったのだ?」
「………」
さとのふたつの眼が、ゆらゆらと揺れていたが、やがて決心したように一度ぎゅっと瞑ってから目を開け、
「今から聞くことは、さとのひとり言だと思ってくださいまし…上様はもう眠っていて、聞いていない、と…」
「あい、分かった」
「…本当は、翔さまのことを、誰にも触れさせたくない…さとだけの翔さまでいて欲しい…
今頃は、千代様と唇を重ねているのだろうか?…千代様の乳を吸うておられるのか…千代様を抱き締めて…千代様の中に……
そう思っただけで、胸が焦げてしまいそうに苦しくて、苦しくて…
そんなことを思ってしまう自分の醜さが嫌いで…」
「さと……」
「上様がお千代の方様とのお寝屋に行かれる夜は、布団をかぶってこっそり泣いておりました」
さと…初めて聞かせてくれたな…心の奥にある黒き感情…
「どうしてさとは男なのだろう…と、何度恨んだことか…上様のお子を産むのが、私だったら…どんなにか良かったのに…と…」
物わかりのいい、穏やかで慎ましく誰にでも優しい…
御台所は、そんな気持ちを隠して、笑っていたのだ。
「さと」
「……」
さとの身体を強く強く抱き締めた…
折れてしまう程に…
それでもまだ、私の気持ちには足りないくらいだった。