第1章 第1章
『もうお願いしちゃったの?』
何を言わずもがな家庭教師の件だ。
まだお願いしていないなら私が速攻でキャンセルしに行く。大体その家庭教師男だろう。今までも何回か雇ったことあるけど長続きした覚えはない。全員男で尚且つ人の体目当てのクソ野郎達ばかりだったからだ。
今回もそんな男だったら御免被りたい。
幸いこれまでのクソ家庭教師共のおかげで男の急所はいくつか発見してるし何度か蹴り上げた事もある。
今回もそんな奴だったら速攻蹴り上げて家から放り出してやる、
「お願いしちゃった!」
大体家庭教師というものはそんな………………ん?
『いまなんて???』
「だから…お願いしちゃった!」
私の僅かな希望は母の満面の笑みによって打ち砕かれた。死にたい。正直な感想だよ。
「………………やっぱり嫌だった?今までの家庭教師さん達もあんなのだったし…」
顔を覗き込む心配そうな母に分かってんだったらお願いすんなよとツッコミを入れる。
というか今までの家庭教師がクソ野郎なのは母も知っていたはずなのに今回も懲りもせず家庭教師を雇う母はある意味素晴らしいな。娘の危機よりイケメンが買ってるんだよ。思えば今までのクソ野郎達もかなりのイケメンだった。イケメンに釣られたのかこの母は。
それが両手では数えきれない家庭教師を雇った後今漸く分かった事だった、
『いや…もういい。とりあえずその家庭教師いつから?』
「今日の………あ、そろそろ来る!準備しなくちゃ!デルタ、インターホン鳴ったら出てちょうだいね!」
色々衝撃的な言葉を吐き捨ててキッチンへ向かう母。
いや待って今?
報告遅すぎるだろ。
心の準備が全然できてないんだけど。
マイペース極めすぎだろうちの母。
『……………っ、はい!』
インターホンが鳴った。
ああ本当に相手はどんな人物なのだろうか。
顔みて無理だったら蹴りあげていいだろうかととんでもなく失礼なことも考えてしまうほど私はパニックになっている。
扉をゆっくり開く
『…………………ッ…なんで』