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人生は常に事件に満ちている【コナン】

第4章 ちいさな彼女 【灰原】


「そいつは〝俺〟の事も知ってるぜ。あっさり見抜かれちまった」
「……」
一気に彼女の郁大への警戒度は高まっていたが、コナンの発言により少し弱まる。
「新一は親友だからな。ちょっと考えりゃわかる」
「…あなたも探偵気取りの首を突っ込みたがるタチなの?」
「いいや?俺のは推理じゃないからな」
後ろで「嘘つけ」ときこえたが、郁大は無視をした。そしてもう一度、彼女に問いかける。
「君の、名前は?」
「……宮野、志保」
「志保さんか」
郁大が頭を撫でると哀は驚きびくっと身体を震わせたが、抵抗はしなかった。
「あん?なんで〝さん〟なんだよ?」
それを崩したのはコナンで、怪訝そうに郁大に問いかける。
「なんか、年上っぽいなと思ってさ」
「そうかぁ?そうなのか?」
「…まぁ、間違ってはいないわね」
哀の答えに、ほらなと郁大が言う。そして、けど、と続けた。
「哀さんは、なんで縮んだんだ?」
「…外でその呼び方しないでよ?」
「わかってるって。外ではちゃんと哀ちゃんって呼ぶからさ」
「…」
それにもなんだか複雑そうな顔を下が、哀は振り払って郁大を見た。
「後に退けなくなるわよ」
「新一が縮んだ原因を知ってる時点で、もう巻き込まれてるし、巻き込まれに行ってるさ」
「……」
郁大の表情は、目はゆるぎない。哀は一度目を閉じ、開くとその言葉を紡いだ。
「あの薬は、私がつくったの」
「…え?」
さすがの郁大も目を瞬かせる。歳は自分達より上と推測したが、まさか薬を作った本人だとは。つまり、それは。
「あの組織に、私もいたの。裏切って、このザマだけど」
「そ…れはさすがに驚いたな……けど、そうか」
「それ、だけ…?」
今度は哀が目を瞬かせる番だった。あっさり受け入れた彼の気が知れない。
「もう組織にいたくないから抜け出してきたんだろ?自分で作った毒薬なんてもんを飲んでさ」
「どうして私が自分で飲んだと思うの?」
「さぁな、〝勘〟だ」
「勘って…」
哀が動揺を隠せずにいると、コナンにぽんと肩を叩かれた。
こういうやつだ、諦めろ。
苦笑しながら首を振るコナンの表情はそう語っていた。
「ま、よろしくな、哀さん」
「…よろしく」
灰原哀。元黒の組織の幹部。コードネームはシェリー。
だがそんな事実はもろともせず、郁大は受け入れた。こうしてまた彼は、闇に一歩、巻き込まれに行く。
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