第3章 幼い約束
なんとか安室の胸の中から抜け出したみなとは安室の顔をまじまじと見つめた。
『零くん…?』
「あぁ。」
『……名前……』
「これでも探偵の端くれだからな。素性を周りに明かさないようにしているんだ。」
なんのこともない、といった風に半分本当、半分嘘を言う。
そして"零"の名前を出さないよう念押しをする。
『じゃあ、透くん?』
「よろしい。」
そう言ってどちらともなく笑いあった。
〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜
鳴り響いたのはみなとのスマホだった。
『ごめん、出てもいい?』
「あぁ。」
『もしもし?………え?…今?…家…だけど……うん、喫茶店?…あぁ、…うん、わかった。……え?わかってるわよ。うん、はーい。』
「………彼氏?」
『ち、違うよ!親戚の子。近所の喫茶店に来てくれって。』
親しげに電話するみなとを見て安室は少し焦った。
そう、みなとももう26になる、彼氏ぐらい居たっておかしくはないのだ。
「最近、この辺りも物騒になったからな、送っていく。ちょうどバイトに出かける時間だしな。」
みなとを呼び出すやつの顔を是が非でも見てやろう、と提案した安室だったが、予想外にもみなとは嬉々としてそれを受け入れた。
その様子を見て、もうしばらくは心配いらないかもしれない、と安堵する安室だった。