第16章 底
白さんは私にマフィアの仕事をさせて下さらなかった。
何時も事務とか掃除とか。
役立たずなのかと思って沈んでいたら、
「君は彼女に云われた事をやればいい。考えがあるんだよ。信じな。…普通簡単に人を拾わないよ。保障しよう。彼女は君を大切に思ってる」
と治さんが云って下さった。
その瞬間が私が治さんを好きになった瞬間。
治さんは白さんが好きなのに。
こんな五つも離れた子供なんて相手にしてもらえる訳無いのに。
でも、表に出さないなら。
想うだけなら。
と想いに鍵をかける事にした。
仕事に疑問はあったが、白さん達と仕事をするのは楽しかった。
他にも治さんの家で泊まる時、「一緒に寝てもいいですか?」と聞いてOKが出た時、矢張り妹の様な存在なんだと悲しかった。でも、それ以上に許された事が嬉しくて。治さんの腕の中は安心して。妹の様な存在でもいいかと思う位には、幸せだった。
でも四人で過ごす時間が一番好きだった。
それは直ぐに壊れてしまったのだけど。
「ごめん、研修が早まった」
「研修…」
研修に行く事は知っていたが、それはもう少し先だと聞いていたから凄く驚いたのを覚えている。
「…何時だい?」
「…来週…」
「急だね」
「…」
泣き出しそうな顔。
中也さんに云ってるのか聞こうとしたその時、
「中也には、私が居なくなる事教えないから」
「え⁈」
表情は変わり、意志の篭った目をしていた。
それは、悲しみを滲ませていたけど。
「蓮ちゃんは太宰の下に異動ね。太宰、頼んでいい?」
「いいよ、大丈夫」
「蓮ちゃんも…太宰の下でいい?」
「全然平気です。白さんこそ、頑張って下さい」
「有難う、二人共」
そしてその日から一週間後。
白さんは日本から居なくなった。