第11章 珪線石の足音
「お待たせ〜、いやぁごめんね、話し込んじゃって」
『!森さ…………へっ?な、何?なに、なに!!?』
ずんずんと歩いて距離を縮めていくと怯えられるが、動く気力のない彼女の目の前で傅き、彼女の元ボディガードとやら……に難癖つけて始末してきた報告書を手渡し、呼んでもらう。
「悪い、仕事に行ってた」
『……なにこれ、殺したの?』
「そうだ」
『なんで?一応一般人でしょうこの人』
「…………俺の私怨だよ」
ぴく、と反応を示した彼女は俺とようやく目を合わせてくれて、報告書をくしゃりと握ってから床に捨てる。
それから俺の首元に腕を回して引っ付いてくるのだが。
「どうした?俺を恨んでもいいんだぞおまえは」
『……安心、して…………も、もう私のとこ、こない?その人』
「おう、もう来ねぇよ」
『中也、さんは……私が死んだら、嬉しい?』
「リアに死なれたくなくて止めちまったのに、そんな風に思う?」
『リアね、びっくりしたの……中也さん、リアにご飯作って食べさせてくれてね?すごい美味しくて…………食べても何にも苦しくならないの、嬉しかったの』
首領は、知っていた話なのだろう。
「リアが苦しむようなもん食べさせるわけねえだろ〜?」
『大丈夫なんだよ、毒食べても平気になったから死なないし』
「そんなことしてくる奴らは俺がおまえの前から消してやるよ」
『……ちゅうやさん』
何か言いたげに呼びかけられて、できるだけ柔らかい声色でなに?と聞き返す。
頭を撫でている内に警戒を緩めてくれたのか、彼女のお願いを教えてくれた。
『…………り、あ……あの……おなか、すいた』
「うん」
『ほんとはおなかすいてたの……でもね、ちゅうやさんと会うまで食べても食べても味がしなくってね。頑張って食べても戻しちゃって……おなか、すいてて』
「……この二ヶ月?」
こくん、と素直に頷いた彼女を横抱きにして、首領と共に食堂のVIPルームへと移動する。
「とりあえずこれだけ用意しておいたけど、食べてみる?」
『…………これ、リアに?』
「おう、味は保証するぜ」
『たべていいの??』
「いいぞ〜、残しちまうくらい満腹になるまで食べな?」
『リアが、元気でも困らないの……?』
「そんな奴らは俺がその内全員消すから居なくなるんだよ、俺はリアが元気な方が嬉しいんだから」