第11章 珪線石の足音
「で?なんで探偵社」
「リアが手前といてぇって顔してっからな。当然だろ」
「ここは保育施設ではないのだけれど……ってあああ、ちがう、ちがうよリアちゃん!?来てくれて嬉しいからね!!?」
『ごめんなさい、治さんが迷惑なら帰「今すぐ抱っこしよっかリアちゃん♡やっぱり僕のリアちゃんはここがいいもんね〜♡♡」……これで中也さんもおしごとできる?』
「おまえが甘えようが寝ようが、俺の仕事に支障は無ぇんだよばぁか」
『いや、あの、もう既に支障が出てませんかこれ』
撫でくりまわしただけでそれである、まったく。
太宰の野郎に抱き上げられて照れているのだろうが、まああいつにはお見通しなのだろう。
「ほら、とりあえずデスクくらいなら貸してやるから“リアちゃんの見えるところで”仕事しなよ。私が甘やかしてるから」
じ、と見られていることに気付いたらしく、ん??と微笑み返して目を見ると、そのまま頭を撫で……ああ、こいつもしかしてそれで撫でられんの好きなのか?
「それにしてもリアちゃんから探偵社に来たいだなんて、初めてだったんじゃない?」
『谷崎さんやさしいからすき』
「ブッ、」
あーあー、始まった。
「リアちゃんほんと素直になったねぇ、熱のせいだけじゃないでしょそれ」
『乱歩さんいっつもやさしくしてくれる、すき』
「今日の君にはゼリーをあげようか♪」
また一人陥落したのを見ながら、じぃ、と人虎を見やるリア。
ああ、と薄々予測はしつつも、そんなことは露知らず、ドギマギしたような様子で慌てる人虎のなんと哀れなことか。
『中島さん治さん取るからたまにやだ……』
「えええっ、取ってないよ!!?」
「ははっ、君ほんと素直になったねえ?」
『き、君って言った……中島さんには敦君呼び「リアちゃん、すごい可愛いことになってるから落ち着いて」ん、リアちゃん……♪』
「好きだねぇそれ」
『だって治さんが付けてくれた名前だもん』
「「「「はぁあ!!?」」」」
一同総出で反応した。
もちろん俺も含めてなのだが、そうか、よく考えてみたらそりゃそうか。
名前なんか、そんなことするクソ親どもが新しく与える訳もなく……こいつが拾ったんなら、そうなのか。
「それにしても素直だ。そんなにリアちゃんが素直だなんて、何か企みが『な、ないもん』あるんだねその反応は???」