第9章 【炎のゴブレット】
真っ黒い帆船は、ゆっくりと湖面を滑り岸にたどり着くと、やがて乗組員が10数名ほど下りてくるのが見えた。みんなモコモコの分厚いマントを着ており、ゴツイ男子ばかりだ。
集団の先頭にいた人間は、ダンブルドアの姿を見るなり、まるで旧友との再会のごとく近寄ってきた。
「お久しぶりですな、ダンブルドア!!」
「これはカルカロフ、お互い元気そうで何よりじゃ」
固い握手を交わすと、カルカロフ校長は愛想よくダンブルドアの肩に手を回した。そしてダンブルドアの後ろに控えているホグワーツ生徒を見て満足げに笑い、次に城を見上げた。
「おお……懐かしのホグワーツ校」
カルカロフ校長は、まるで数10年ぶりに我が家に帰ってきたかのように振る舞った。その臭い役者芝居に、クリスはひと目でこの男の事が嫌いになった。
それでなくとも、ダームストラングは純血主義としての評判高いのだ。そこの校長というだけで、クリスには嫌いになる要素が十分だった。
「待ちに待った日がやって来た、ダンブルドア、ご尽力感謝します。ビクトール、さあこちらへ。ダンブルドア、ビクトールを暖かい場所へ案内して貰えますかな?ビクトールは風邪気味なので……」
列の中から1人、のっそりと生徒がカルカロフの傍によった。それを見て、ロンがありったけの力を込めてハリーを肘で突いた。
「ハリー!信じられないぜ!クラムだ、ビクトール・クラムだ!!」
「うん、分かってる……分かってるよ」
興奮するロンとは対照的に、ハリーは夢見心地でクラムの後姿を目で追った。
ビクトール・クラムと言えば、確かコンパートメントの中でロンがミニチュア人形をネビルに見せて自慢していた気がする。
クリスに言わせれば、だから何だというのだ、と言うのが正直な感想だった。それはハーマイオニーも同じ意見だった。
「ロンもハリーも少し落ち着いたら?ただのクディッチ選手じゃない」
「“ただのクディッチ選手!?”ハーマイオニー、君ったらあの試合を生で観ていてそんな事が良く言えるな!!」
「じゃあ、観ていない私はこき下ろしても良いんだな」
クリスが半ば冗談とも取れない発言をすると、ロンだけでなくハリーも軽蔑の視線を投げつけてきた。これだからクィディッチファンは嫌いなのだ。