第3章 春樹side
「ひっ…!」
「わ…っ…よ、避けなよ…!」
俺が通れば皆がどく。それが自分にとってはストレスになっていた。自分から喧嘩を売ることは無いし、何もしてない奴に暴力は振るわない。
「チッ…うぜぇ…。」
「春樹、そうやって人のこと睨むから、みんなが逃げていっちゃうんだよ?」
「別に。お前いるから。」
そう。俺にはコイツがいればいい。ずっと隣で笑ってくれていれば、それでいい。
「あ…。」
「何?」
「今日、頭髪検査と服装チェックの日だった。」
「あー。」(何それ?)
学校に着くと、先生が校門の前に立っていた。クリップボードを持ち、いろいろと見ている。
何かを言われたが、無視をして横を通り過ぎた。
少し遅れて菜月が来た。
「なんで、春樹はずっと金髪なの?」
菜月にふと、そんな事を聞かれた。
「…お前が好きって言ってたから。」
「え…?言ったっけ?」
「言った。覚えてねぇの?」
「…?」
「高1になったばっかの頃。」
*
高校1年生の春。5月頃。
「うぁぁ…好き…!かっこいいいい。」
「何が?」
「金髪!ほら!」
俳優かモデルの奴。菜月が惚れ惚れしているのを見て、無性に腹が立った。
「ねえ、春樹も金髪にしない!?」
「そんなに好きなら自分でやれば?」
少し不機嫌な口調で返した。
「えー!それじゃあ見れないもん。」
でも気づいていないようだった。
「…気が向いたらな。」
*
「そういえば……言った。」
「だろ?」(その次の日から、俺は金髪にしたっけ。)
「…じゃあ髪の毛が若干長いのは?」
「それもお前が好きって言ってたから。」
「それは覚えてる。でも、だからと言ってずっとその髪の毛でいるわけにはいかないでしょ?」
「菜月が好きって言うんなら、それでいい。」
自分でも、ビビるくらい、俺はコイツが好きだ。
「じゃあ、もし黒髪の短髪が好きって言ったらどうするの?」
「髪の毛切って金髪やめる。」
「自分の好きな髪型にしたらいいのに。金髪ずっとキープしてるの大変でしょ?」
「もう慣れた。」
教室に着くまでずっとこの会話。